矢野大浜バス停から矢野小学校へ向かって行く小道を進んでいくと、住宅街の中にポツンとその建物はあります。
周囲の雰囲気とはどこか時間の止まったような佇まいをしている建物は、なぜか懐かしいと思わせます。
屋根の上には今では滅多に見られないレンガ造りの煙突が空高く突き出していて、入り口の見た目は昔の映画等でしか見たことのない造りをしています。
そこは「日の出湯」という公衆浴場。煙突に名前が書いてあったが、今は半分消えてしまっています。
入ってまず目に入るのが、長年使われてきた味のある脱衣所のロッカー。男湯からは入り口右手に番台がある。
ここで銭湯を営んでいる、おばあちゃん。聞くと建物は昭和初期頃のものだろうと言われていましたが、おばあちゃんが3年程前に亡くなったご主人と結婚し戦後に、購入したものだとのこと。かれこれ50年やってきている。
脱衣場にある設備はどれも昭和を感じさせるものばかりで、今では見ることはできないような造りをしています。
おばあちゃんに「もうこの感じの雰囲気が出せる銭湯は多くないんじゃないんですか?」と聞くと、「そうじゃねぇ、ありゃせんじゃろう。私が知ってる県内の銭湯は9箇所しかない。」とのこと。さらに「しかし、その中でも薪で焚いた湯屋は無いんじゃないかのぉ。みんなボイラーじゃろうて。ここは私が全部やりよりますけん。」なんと、ここの銭湯の湯は薪をくべて沸かしていました。
裏手に回って特別に燃料室を見せてもらった。
沢山の薪の奥に炉があり、許しを得て鉄の扉を開けてみた。すると、こぢんまりした大きさからは想像できなかった扉の重さをしていました。また、燃料の薪も個体差はあるものの、中には4~5キロにもなる角材もあった。おばあちゃんはそれを毎日一人で炉に投げ入れているそうです。「大変ですよね?」と聞くと、「そりゃあねぇ、だから今日もこれから整体に行ってきますよ(笑)でもこの炉が壊れるまではやるかねぇ。」と、笑いながらおっしゃってました。今年で80歳を迎えられたという。
この貴重な銭湯も入ることができるのは、いつまででしょうか。
いつまでも残してほしいですね。
話を終えて別れを告げると、さっそうと自転車に乗って整体へ向かわれました。
店舗情報
日の出湯(銭湯)
住所 広島市安芸区矢野西5-19-28
定休日 第2,4日曜
営業時間 16:30~21:00
料金 大人:400円 子供:150円 幼児:70円